先日、メディア等でも大きく取り上げられている九州の農園で、数千個もの梨が盗まれたという悲痛なニュースを目にしました。去年、大量の盗難被害に遭ったことで会社は破産に追い込まれ、苦楽を共にした従業員にも辞めてもらわざるを得なかったそうです。それでも諦めずに、家族だけで再起を図った矢先……2年連続となる被害に見舞われてしまったのです。農園のご家族は金銭的な打撃以上に「気力をなくしてしまった」と語り、ついに来年での閉園という苦渋の決断を口にされていました。
手塩にかけて育てた命を根こそぎ奪われる絶望。それは一度立ち上がろうとした生産者から「明日へ向かう気力」そのものを奪い取る行為であり、同じ農家として筆舌に尽くしがたい憤りを感じます。そしてこれは決して、どこか遠くで起きた「他人事」ではありません。
単なる「泥棒」ではない。日本の農業への死活問題
農作物の窃盗は、スーパーでの万引きのような感覚で片付けられがちですが、実態は全く異なります。私たち農家は、一年の大半を費やし、天候という自然の猛威に耐えながら、命を削って作物を育てています。収穫直前の作物を奪われることは、その年の収入がゼロになるだけでなく、従業員の生活や次世代へ農地を継ぐ未来すらも絶たれることを意味します。
心折られ、農家が次々と廃業に追いやられれば、日本の食料自給率はさらに低下します。これはまさに「日本の農業が終わる」という、私たち生産者が肌で感じている強い危機感なのです。
「明日は我が身」の恐怖と、防ぎきれない現実
今回のニュースでさらにやりきれないのは、被害に遭われた農園が「人感センサー」等の防犯対策をしっかりと講じていたにも関わらず、再び標的にされてしまったという事実です。
どれだけ農家が自衛の努力をしても、広大な農地を完全に守り切ることは難しく、悪質な窃盗を防ぎきれない。それが今の日本の農業現場が抱えるリアルな課題です。もちろん、国や自治体も防犯設備の補助金など対策をしていないわけではありませんが、現場の負担や、被害に遭った際の救済措置が追いついていないのが現実です。
そんな中、タレントのダレノガレ明美さんが農家を守るために支援金の受付を立ち上げられたことや、近隣の皆様をはじめとする多くの方々が募金活動などを通じて温かい手を差し伸べていらっしゃる事実を知りました。国の危機とも言える事態に、行政の枠を超えて個人や地域の人々が立ち上がり農家を守ろうとしている。その温かい支えに深く救われると同時に、日本の一次産業を取り巻く現状に対する、強い歯がゆさを感じずにはいられません。
それでも私たちは、決して屈しない
「明日は我が身かもしれない」という恐怖や不安は、きっと全国の農家が同じように感じていることと思います。それでも、多くの生産者が歯を食いしばって畑に向かうのは、手塩にかけた作物を待ってくださる「お客様」の存在があるからです。
私たちも同じです。「トリコのトマト」を求めてくださる方々がいる限り、絶対に立ち止まるわけにはいきません。どんなに困難な状況にあっても、私たちはこれからも真摯に畑と向き合い、皆様へ『本物』をお届けし続けます。
皆様へのお願いと、農園からのメッセージ
いつも当園を応援してくださる皆様へ。日本の農業を守る一番の力は、皆様が「正規の生産者から、直接買うこと」を選んでくださるその行動そのものです。そして、皆様の「美味しい」の一言が、私たち生産者にとって何よりの励みであり、明日へ向かう最大の原動力になります。
今シーズンのトマトは完売しておりますが、次回11月頃の収穫、そして皆様へは12月から順次お届けできるよう、丹精込めて育ててまいります。今後とも、日本の農業と当園への温かいご支援を、何卒よろしくお願い申し上げます。


